鉛レスはんだ 本当の真実
第四回   知らない知識 材料編(その3)適正な材料の選定
日時: 2008/06/06
(株)電子実装.com  
はんだ付け技術でもそうですが、正しくはんだ付け技術を適用するには材料の適正な選定が基本になります。はんだ付け技術の場合、基本的な材料としては「はんだ」と「フラックス」になりますが、正しく材料を選定するには、その材料が実際に使用される場面における材料の挙動を知る必要があると思います。ここでは、材料の挙動と材料の選定並びに材料選定評価試験における注意事項について述べてみたいと思います。


<はんだ材料の選定>
現在は鉛レスはんだが主流になっていることから、鉛レスはんだについて考えてみたいと思います。鉛レスはんだの主流は、Sn3Ag0.5Cuはんだ(銀3%、銅0.5%、残部錫)です。このはんだの特徴および従来のSnPbはんだとの相違に関しては、このシリーズの第一回目と第二回目で述べましたのでそちらを参照してください。ここでは、これ以外のはんだについて考えてみたいと思います。

(1)低Agはんだ(Sn1.0Ag0.7CuはんだおよびSn0.3Ag0.7Cuはんだ)

最近、話題になっている銀の含有量を少なくしたはんだです。このはんだ材料は、日本の多くの電子情報関連企業が参加しているJEITA(社団法人 電子情報技術産業協会)から技術 レポートJEITA ETR-7023(第2世代フロー用はんだ標準化プロジェクト活動結果報告)が 2007年に発行されて以来、急速に注目を集めています。詳細はJEITAから技術レポートを 入手し、読んで頂くとして、ポイントをまとめると次のようになります。

  · あくまでフローはんだ付け用として推奨している。リフロー用としては推奨していません。銀の含有量を抑えているためコスト低減を目的としています。

  · 2種類の低Agはんだを推奨しています。一つはSn1.0Ag0.7Cuで、基板のスルホールへの上がり性および耐ヒートショック性がSn3Ag0.5Cuに近い特性が要求される場合にその使用を推奨しています。もう一つは、Sn0.3Ag0.7Cuで、コスト低減メリットはより大きくなりますが、基板のスルホールへの上がり性および耐ヒートショック性が劣るため、これらの要求が緩い場合にその使用を推奨しています。

  · どちらのはんだもSn3Ag0.5Cuと比較すると、濡れ性が低下するため、この低下分をフローはんだ付け装置の改造もしくは調整によって補う必要があります。従いまして、フローはんだ付け装置の設定を「はんだ付け温度を250±2.5℃、1次浸漬時間を1.5秒以上」にすることを推奨しています。       
一方、はんだ合金の設計という技術的な観点からこの低Agはんだを考えて見ますと、次のようなことが考えられます。

  · Agを少なくしたことから、SnAgの共晶点から外れるため、はんだの融点は通常のSn3Ag0.5Cuと比較し、数度上昇することになります。

  · Agを少なくすると、Snが被はんだ付け材料との間で金属間化合物を作りやすくなり、銅食われ、はんだ付け界面での脆化などの問題が発生しやすくなります。このため、通常のSn3Ag0.5Cuと比較し、Cuの含有量を0.2%だけ高めこの欠点を防止していることが判ります。

  · 上記に示す、融点の上昇とCu添加量の増加により、濡れ性とスルホールへの上がり性の低下を招いていると考えられます。(これらの欠点を補うため、はんだ付け温度を高目に、溶融はんだへの浸漬時間を長目に設定する必要があり、前述したような、フローはんだ付け装置の推奨設定になったものと思われます。)

  · Agの含有量を少なくしたため、SnとAgの金属間化合物層も薄くなり、その分若干柔らかくなりますが、機械的強度もその分弱くなり、全体として、はんだ材料としての信頼性は低下します。これが、JEITAで報告されている耐ヒートショック性の低下に繋がっているものと思われます。

この低Agはんだをコスト低減の観点からペーストはんだでも使用しようという動きもありますが、この場合、ここで述べた欠点をよく考慮し、信頼性評価試験を行った上で採用するかどうかを慎重に見極める必要があると思います。
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