価格決定のメカニズム - 生産価格、利益、エンジニアリング費用について
契約価格および最終的な利益は、OEM企業・EMS/ODM企業双方にとって先ずは一番の課題です。そしてOEM企業側に発生する各種管理コストについてOEM企業はよくよく熟慮する必要があります。
契約価格と利益については市場でのシェア、そのビジネスに対するウェイト等を考慮し、EMS/ODM(そしてそれらのOEM顧客)によって決められます。逆に言えば、その市場・製品に対して将来的にシェアを伸ばす意思がない場合には、魅力的な価格は期待できないかもしれません
又、委託生産の契約において決められたフォームというのはもちろん存在しませんが、自社にて共通の契約書条項を作成しておくことによって、全ての案件において同一条件での利益計算、コスト低減の大小を測ることは可能であると思われます。
一方、下記の表からは各EMS/ODM企業が利益を生み出すため、どのようにビジネスを展開しようとしているかをうかがい知ることが出来ます。
生産量
つまり、EMS/ODM側にとってはある一定数の‘量’が必要とされ、OEM側にとってもパートナーであるEMS/ODM企業の規模や製品分野(自社製品生産に必要な設備などの追加がないかどうか、など)等を見極めることが価格交渉の上で必要とされます。(例:オシロ周波数、携帯電話テスターなど)
< 契約価格、利益、交渉>
受託生産においてEMS/ODM企業の最も重要な点は、OEM企業との価格交渉において如何に生産量・価格のマトリックス上で利益の得られる点を確保できるかどうかです。
例えば、OEM企業からの生産要求が、上記表で示した‘1’の部分に当たる場合、一台あたりの価格は非常に高いものになる可能性があります。
この段階では、EMS/ODM企業側にとって高い固定費用が必要とされます(例:非反復エンジニアリング費用=Non-recurring engineering(NRE)、拡大非反復エンジニアリング費用=Extended non-recurring engineering(ENRE))
NREの例:
- 設備
- 特殊ジグ
- その他専用機具・スタッフなど
ENREの例:
- 初期プログラム費用
- 材料調達ルート開拓
- 各種在庫管理
- 部品の信頼性管理
一方、EMS/ODM側にとってこれらコストをカバーするに十分な量の生産が行われ始めた場合には、一台あたりの利益が確保され始めます。
これが上記表の‘2’の部分にあたり、NREやENREといったOEMからの受託生産開始時に必要な諸経費をカバーしつつ、EMS/ODM側にとって利益が確保され始めます。
当然ながら、EMS/ODM企業はこのブレークイーブンポイントを上回る条件での契約を求めます。
その他OEM企業にとっての重要ポイント
契約価格、契約条項の検討についてはOEM側の管理コストも考慮したうえで、EMS/ODM企業との交渉をすることをお勧めします。例えば:
- OEMからの急な発注増にも対応できる十分な投資をEMS/ODM側に要求する
- 数量に基づいた単価付けの代わりに、契約納期・契約スケジュールの貫徹に対するコミッション支払いを行う
上記の内、特に2番目は重要ポイントで、仮に50,000台/月の生産品が100,000に増えた場合、納期が2ヶ月かかってしまっては元も子もありません。(この場合、EMS/ODM側へのペナルティーはない)
納期管理をEMS/ODM側にきちんと行わせる動機付けとしても、(直接EMS/ODMの利益に影響してくる)コミッション支払いはひとつの有効手立てであると思われます。