図4より、インドの携帯電話市場では低価格・モノクロディスプレー携帯が僅かな種類となっていることが伺える。販売価格2000インドルピー、50USD、\5,300以下の機種は数機種のみである。一方カラースクリーン機種が急速に市場シェアを拡大しており、販売価格2000~4000インドルピーの機種(約102USD、\10,700)は全てカラーディスプレーを採用し、さらにFM ラジオ、MP3、MMS機能を搭載している。そして約4000インドルピーの価格帯では、30万画素のデジタルカメラ搭載機種も発売されており、更に4000~6000インドルピーの機種は130万画素カメラ、ブルートゥース、ミュージック機能、フラッシュカードなどの新機能も搭載している。上記より、新興市場におけ る主流製品も既に先進国のレベルに近付いてきていることが分かる。



このように新興市場においても、低機能機種では消費者の満足を得られなくなってきている。これはTRIが、低価格カラーディスプレー機種が世界の携帯電話市場を継続的成長に導く主要要因である、と位置づけている理由である。現在の新興市場における携帯電話の販売状況と機種の分布から分析すると、今後新興市場ではモノクロディスプレーと通信のみの機能では、消費者に認めらないことは間違いない。

国際大手メーカーの他、現地通信キャリアも積極的に製造メーカーと協力して新機種を市場に出している。例えばVodafoneが中国の中興通信と協力して、約\27,000相当のカラーディスプレー機種を発売した。低価格機種で新興市場の販売を伸ばそうという戦略が製造メーカーにあるとすれば、それは大きな過ちであるというのがTRIの見方だ。理由として、低価格製品は利益幅も非常に少なく、中級機種の価格低減により更に圧力を受け、機能・価格比ですぐにでも取って代わられることが挙げられる。またカラーディスプレーのみでこれといった機能を持たない機種も、部品価格の下落が急激であるため、いつでも上位機種に飲み込まれる可能性がある。このように今後新興市場を開拓するのであれば、中級・低級マルチメディア対応機種を中心にして、少なくともカラーディスプレー、FMラジオ、VGAカメラなどの機能が不可欠である、とTRIは考えている。

今後はまずディスプレー規格から変化が始まる。例えばモノクロSTNからカラーSTNへの変化である。同時に低価格化が進み、カメラあるいはゲーム機能の追加などにより、ディスプレー画素数、ディスプレーサイズへの要求も高まり、間もなく低価格機でもTFTを採用する時代に入ることが予想される。TRIではカラーSTNに代わって、TFTディスプレーが新興市場においても主流となり、携帯電話製造各社のTFTディスプレー需要が今後相当に高まってくると予想されている。現在

は日系パネルメーカーの供給力が不足している情況であり、台湾系TFTパネルメーカーが大手携帯電話メーカー向けの供給会社となる可能性が非常に高いと見られる。


④ TRIの眼
生産台数から見るならば、新興市場が今後の成長の原動力であると言える。同市場において今までは選択可能な機種が非常に限られ、且つ機能も限定されていた。価格が低下し豊富な機能が追加された現在、機種更新の潜在的需要は絶対無視することは出来ない。さらに新興市場の経済自体が成長し続けている状況下で、コンシューマー向け電子製品が現地消費者の主な消費対象となっている。携帯電話はカメラ、ラジオ、ミュージック機能、通信などの機能を有し、尚かつ持ち運びできる商品であるため、真っ先に購入を検討する商品でもある。このように、新たなユーザー増と新機種への買い替え・更新の需要で、2008年度の世界携帯電話生産量は13億台に達する、とTRIは予想している。   

以上の要因から、ローエンド・マルチメディア機種がすでに市場の主流となっており、モノクロディスプレーは今後益々市場から淘汰されることが分かる。現在市場では低価格ながらもカラーディスプレーを備える機種が中心となり、2008年度にこの情況は益々顕著になるため関連業者は重視が必要だ。関連部品メーカーもこの傾向に沿った製品供給・利益バランス戦略を採用すれば、2008年度も確実な成長を収めると見込まれる。
pdficon 
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