台湾の大手紙『聯合報』(2025年3月4日付)が報じた。それによると、台経院の劉研究員は、TSMCが公表した最新の対米投資計画に基づいた分析として、研究・開発(R&D)資源や人材の一部を米国に移すことになることから、先進半導体製造における台湾の重要性は相対的に低下することになるとした。また、今後注目すべき点として、TSMCが米国で建設する6つの製造拠点の量産スケジュールや、導入する先進プロセスで、これまでのように台湾を先行して米国との時間差を維持するのか、台湾と米国の生産を連携させて時間差をなくすのかを挙げ、これが、台湾の先進プロセスにおける競争力に影響を及ぼすとの認識を示した。
TSMCが米国での投資を拡大する背景について劉氏は、米国の反トラスト(独占禁止)法や、米国が半導体製造設備・EDA(電子設計自動化)ソフトウェアの供給を掌握していること、台湾の抱える地政学的リスクに対する懸念があるとした。
その上で、TSMCの対米投資拡大は、米国側にとっては、米国内に先進の製造プロセス及び封止(パッケージ)技術を確保できることで、地政学的リスクが高まった際にも米国内での生産を継続できるメリットがあるとした。一方、TSMCにとっても、米当局が求めていた、米インテル(Intel)の救済に関与せず、独自に対米投資を進めることで、米国の資源を活用して競合を抑えつつ、技術の独立性とグローバルな協力関係の維持を実現できるとの見方を示した。ただ、台湾の拠点が米国の高コストを補完する役割を果たすことを期待されるため、台湾のチップ生産においては、さらなるコスト競争力が求められるとした。
この他、対米投資の拡大が、日本やドイツにある海外工場の拡張計画に与える影響について劉氏は、経営資源が限られる中、米国に1650億米ドルもの資金を投入するため、日本やドイツの新工場計画には慎重な姿勢を取る可能性があると指摘。うち日本について、熊本第2工場を2027年までに稼働予定だが、それ以降の追加投資は現時点では決まっていないと述べた。
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